A-glaze

超音速旅客機の期待を音速の衝撃から支え、高級プロダクション艇メーカーや、スーパーヨットビルダーに支持された品質。

自動車のコーティングなどで知られるポリマー加工は、大ざっぱにいえば塗装面や 金属部にポリマー(有機化合物)を浸透させ、汚れを防御しながら、艶と光沢を維持 させるものだ。

A-Glazeは、もともとコンコルド用に開発され、その後、飛行機や自動車の分野で 実績を重ねてきた英国製品だが、「A-Glaze Marine」はプレジャーボート用のポリマー加 工製品として、ボートで使われるゲルコートや FRP、マリンペイント、チーク(木材)、アクリルを対象に、紫外線、大気汚染物、酸性 雨、塩分などによるダメージや、ペイント自体 の色あせを最小限に抑えるように開発され た。A-Glaze社からライセンスを受けた業者だけが施工できるシステムで、施工後1年 間は、ワックスやポリッシュの必要はなく、水洗いだけで美しい状態が保たれる。

A-Glaze Marineは8年前の発売以来、 プリンセス、サンシーカー、フェアライン、グ ランドソレイユなどの高級プロダクション艇メーカーの工場オプションに設定されている ほか、ロイヤルハイスマンのようなスーパーヨ ットビルダーにも採用されているという。

クリーニング&コーティング用ケミカル (A-Glaze Marine)
左から、「ノンスリップデッキ用シャンプー」(普段のメンテ用)、「ノンスリップデッキ用クリーナー」、「GRP用ポリマーシーラント」(110ml、2本)、「V2グラスシーラント」(ガラス、アクリル窓用シーランド)、「プリカット」(コンパウンド系)、「表面プレパレーション」(細かい穴埋め)、「チーク用シーラント」、「チーククリーナー2番」、「チーククリーナー1番」。下段はマイクロファイバーウエス

 雑誌掲載記事

すべては徹底的な洗浄からはじまる

ポリマー加工をする、しないにかかわらず、船掃除の基本は洗浄だ。
洗剤 (今回はA-Glazeノンスリップデッキ用クリーナーを使用)とデッキブラシを使い、 まずは徹底的にデッキや船体を洗い清めなければならないのだが、その洗い方にも、ちょっとしたコツがある。

ノンスリップデッキの場合は、柔らかい毛先のデッキブラシに洗剤を付け、 汚れを浮き出すように優しくブラッシング。角度を変えて、まんべんなくブラッシングした後は、汚れとともに、洗剤をしっかり洗い流すこと。 ノンスリップパターンのなかに洗剤が残ると、そこに汚れが 付着し、すぐに汚れが目立つようになる。
デッキブラシでは掃除できない部分、 たとえばハッチ、サイドポート、ウインチ、 トラベラーなどの艤装品周辺などは、 最近はやりの「メラミンスポンジ」を使うと、驚くほど汚れが落ちる。 船体(ハル)は、しっかりした足場を 持ってきて、洗剤を付けたスポンジモップでていねいに洗う。デッキから水が流れ落ちる部分は頑固な汚れがつきやすいが、メラミンスポンジで軽くこすると、ほとんど取れるはず。それでもダメな場合は、細かいコンパウンドで汚れを取り除いていく、という作業になる。

……書いてしまうと簡単に終わるが、 実際に見ていると、これが大変な作業。 ポリマー加工をする場合、最初の洗浄が最終仕上がりを左右するだけに、延々と手洗い作業が続けられていた。 A-Glaze代理店ティ・セーリングの寺山紘史さんによると、「船の状態によって作業時間は変わりますが、35ftのセーリングクルーザーで、だいたい3日間。そのうちの半分はクリーニング作業です」。 特に難しい作業はないものの、プロ2人の仕事ぶりを見ていると、デッキブラ シ、メラミンスポンジ、スポンジモップといった道具を上手に使い分けているの と、どの部分であってもゴシゴシ力任せにブラシやスポンジをこすりつけていな いことが印象的だった。

チークやアクリルには専用ケミカルを活用

チークデッキや、スライドハッチなどのアクリルも、経年変化による汚れが目立つ部分だ。こうしたパーツには、専用のクリーナーを使うのが効果的だ。

まず、アクリル部は、からぶきしてゴミ や汚れを取り除き、「A-Glazeサーフェイ ス・プレパレーション」というマイクロコンパウンドで、表面の細かいキズや汚れを落とす。
これを水でふき取った後に 「V2グラスシーラント」というコーティング を塗り込み、最後に霧吹きで水をかけ てシーラントを定着させる。
キズや汚れ に応じて、同じ作業を繰り返す。
これらのケミカルはアメリカ軍パイロットのバイザーに使用されていたもので、サングラ スや自動車のガラス、携帯電話などに も使用できるとのこと。コンパニオンウェイのスライドハッチで、作業時間は10分程度だった。

チーク部には、「A-Glazeチーククリーナー1番」「同2番」を使った。いずれも 非常に強い薬品で、防護手袋の使用 が必須だが、ヨーロッパの環境基準は クリアし、チーク自体にダメージを与え ないのが特徴だという。
最初にチーク部にたっぷり水をかけ、「1番」をスポンジで優しく塗布する。
数分 後に浮き出てきた真っ茶色の汚れを、ていねいに雑巾でふき取る。
その後、「2番」 をたっぷりスポンジに含み、ソフトにまん べんなく何度もチークに塗りつける。
1~2分待って、たっぷり水洗いしたのちに、 「チーク用シーラント」を塗ってコーティング が完成する。

写真のコクピットシートで、 作業は15分程度。
これで約1年間は、つやのあるチーク部を維持できるそうだ。

ポリマーシーランドで、船体をがっちりガード

船体も、最初に柔らかいスポンジモップと洗剤で汚れやほこりを浮き出させ、 しっかりと水で洗い流す。
取り切れない 汚れやキズは、細かいコンパウンドと洗浄 剤がブレンドされた「A-Glazeサーフェース・プレパレーション」を、スポンジや電動 ポリッシャー(バッファ)を使って取り除く。

完全に下地をクリーニングできたら、 ポリマーシーラントを塗布する(デッキも同様)。今回、使用したのは「A-Glaze マリンシーラント」で、二度塗りを行っていた。

1回目は、ゲルコートやFRPの非常に細かいすき間(穴)に浸透させ、汚れの浸入を防ぐのが目的。2回目は、船 体表面に3~4ミクロンのシールドを形成 し、紫外線、塩分などから船体を守る とともに、光沢をキープしながら、表面に付着した汚れやホコリを水洗いだけで簡単に落とせるようにする。

「A-Glazeマリンシーラント」は、ストレ ッチ性があり、コーティングが割れにくいという特徴を持つ。効果の持続は約1年(メーカー保証期間)で、その間はワックスやポリッシュの必要はなく、水洗いだ けで美しい状態が維持できるという。

船全体を洗い終えたら、コーティング剤で汚れを遮断する。 1年間は ワックスやポリッシュ不要、水洗いだけで光沢をキープする。

施工1ヶ月後の感想は?

プロによる3日間のクリーニングとコーティング作業で、新艇以上の輝きを取り戻した〈カボック〉。
施行後も、スバルザ カップやトウキョウズカップに出場するな ど、精力的な活動を続ける同艇の白岩オーナーに、感想をうかがった。

「以前からセーリング終了後は毎回、 高圧洗浄機で潮や汚れ、ウオーターラ インに付着した油分を落としていました が、黄ばみや水アカは取りきれませんでした。今回、ポリマー加工してもらって1 カ月が経過しましたが、以前の水圧の 半分程度で汚れが簡単に落ち、今の ところ施工直後のきれいな状態を維持 しています。以前に比べて汚れにくく、 汚れてもスポンジで軽くこするだけで簡単に汚れが落ちてしまうので、後片付けの時間がかなり短縮されました」

実際に船を見てみると、施工前には 目立っていたノンスリップデッキに染みつ いた汚れや、雨だれによる船体の変色も、きれいになくなった状態を維持していた。チークの艶、アクリル板の美しさ を含めて、「進水直後です」と言われた としても、まったく違和感のない状態だ。 「A-Glazeマリン」が、日本に導入されて約2年。代理店のティ・セーリングによると、これまで30隻ほどのヨット、ボート に施工し、白岩オーナー同様の評価を得ているという。